【進撃の巨人】人類最強と死にたがり少女【リヴァイ】
第29章 昔日
俺がアリスと初めて出会ったのは、実を言うとあの檻の中ではない。……奴は覚えていないだろうが。
シアルと言い合いをした後日、俺はエルヴィンとミケとハンジ、シアルと共に、訓練兵団の訓練場を訪れていた。都合良く、見学できる訓練は立体起動だった。
「アリスは次の組ですよ」
担当教官の紹介を受け、森の影からそっとそいつを探す。
「あれか?」
「あれじゃない?」
次々と通り過ぎていく訓練兵たちを指差すハンジとミケを他所に、俺はじっと目を凝らす。
……違う、こいつらじゃない。
「あ………」
隣で小さく声を上げたシアルの目線の先にいたのは、馬に乗った灰色の髪の小さな少女。
「……あれか」
次の瞬間少女は馬の上に立ち上がったかと思うと、瞬く間もなく華麗に宙を舞い、訓練用の巨人のうなじを模したそれに、切り掛かった。
「あ、あれがアリスですよ。今飛んだ女の子です」
担当教官の指差す先が、俺の目線の先と重なる。
「え、あの子、訓練兵だよね?で、なに?14歳!?え、なにそれすっげーー面白いじゃん!!」
驚くハンジに、教官が笑う。
「ははは、驚かれましたか」
「そりゃあ驚くよ!!え、リヴァイより速いんじゃないの!?」
「それはねぇ」
とはいったものの、実際少女の動きは俺でも途中から目で追うことができなかったのが本音だった。