【進撃の巨人】人類最強と死にたがり少女【リヴァイ】
第26章 悪魔の裏側
「で、何話してた」
補助器具をつきフラフラと歩いていくアリスを見届け、俺は扉を閉める。
「いきなりそれか……、何か用があってきたんじゃないのか?」
「うるせぇ、優先事項が変わった」
年こそ俺よりおっさんだが、こいつは油断ならねぇ。なにせ手八丁口八丁でなんでも丸め込んでしまいそうなほど饒舌な野郎だ。
「……ふ、これは……アリスも苦労人だな」
「あ?」
意味ありげに笑うこいつに、少し苛立ちを覚える。
「……いや、本当にな。私に彼女をそういう対象と見る気はない。何より年が離れすぎているし……そうだな、どちらかといえば反抗期の娘を見ている気分だ。だからどうした……という話かもしれないが」
娘、か……。だからいい、という話ではないが。
「……そもそも、これはお前の掌の上だったんじゃなかったか?」
シアルの代わりのストッパー役。そのために恋愛感情を利用した。主を失った殺戮人形という、諸刃の剣を制御するために。
「そうだな………だが、誤算だった」
「誤算……?」
垣間見える、悪魔の裏側。
「……彼女は人形などではなかった。私の誤算はただ1つ、彼女は人一倍人間らしく、優しい少女だったことだな」
優しい目をした悪魔に、俺はそれ以上何も言えなかった。