【進撃の巨人】人類最強と死にたがり少女【リヴァイ】
第20章 夜会
相手は兵士でもなんでもない、肥え太った貴族の豚。殴って落とすくらい簡単にできる相手だ。以前の私なら何も考えずそうしただろう。
だが今は、
「………」
なにも言わずに私を見つめるエルヴィン団長と目があう。……手を出すな、そう言いたいのだろう。
今ここで騒ぎを起こせば、調査兵団の信用は今まで以上に堕ちる。
「地下のゴロツキ風情が……調子に乗ってこんなところに来るんじゃ……」
「調子に乗ってるのはてめぇだ豚野郎」
後方から聞こえた愛しい声。
……本当にこの人は、助けて欲しい時にきちんと助けてくれる。
足が退けられゆっくりと頭を上げると、見慣れないスーツ姿に前髪を上げた兵長。
「ぶ、っ………な、なんだ貴様は!」
「さあな。ただのこいつのツレだ」
私の腕を引く兵長に、頭をさげその場を離れるエルヴィン団長とミケ分隊長。
「てめぇは本当に、不幸に愛されてやがるな」
人混みを抜けて行き会場の端にたどり着き、角の椅子に座らされる。
「兵長に愛されているおかげで不幸は相殺されるので、大丈夫です」
差し出された水を受け取ると、安心からか表情が少し緩む。