【進撃の巨人】人類最強と死にたがり少女【リヴァイ】
第15章 ▼痛み▼
『別に俺は何も言ってねぇよ。それに、負傷届けを出したがらない理由は何となく察しがつくしな。咎める気は毛頭ねぇよ』
『はは、ありがとうございます。そういえば、アリスはどことなく兵長に似ていらっしゃるところが……』
『やめろ、俺はそいつの、常時半分以上隠れた顔くらいしか知らねぇんだ』
『あはは、そうでしたね』
「……ほう、負傷届けの詐称か。どこかで聞いたような話だな」
「ああ、俺もよくやってハンジにどやされまくった」
地下にいた者特有の、恐怖症のようなものだと思う。
「……ボロボロになるまで戦わなきゃ手を抜いたと殴られ、逆に怪我して泣いて帰ってきた日には使い物にならねぇと捨てられる。俺たちはボロカスになっても笑ってるしかなかったんだ」
「捨てられるのが怖い、か……。意外だな、お前にもそんな感情あったのか」
「俺の場合は一種の強迫観念みてぇなもんだ。ずっとそうしてきたから、そうしてただけだ」
仲間を失い、人を信用することを覚え、再び仲間を手にし、失ったアリス。
以前エルヴィンが言っていたが、こいつは強い。
だからこそ、今後もこいつは周りの仲間が死んでいくのを見送り、自由の翼を受け継ぐ側にまわることになるだろう。それは強い者に課せられる使命だ。強い者は、周りを踏み台にする"強さ"を求められる。
俺はアリスの頭をそっと撫で、医務室を出た。