第7章 阿吽の錦
「旦那様から急に頼まれた仕事で毎日不安だったのが...今ではこんなに話してくださって」
私今どんな顔してるんだろ
シグが私の手を取る
少し冷たいその手は私よりも大きくて働いている人の手だった
「紫娜様...」
目が合う
いつも不安そうだったけどこんなに自信に満ち溢れていたんだ
「私は偉そうなことしか言えないですけど
紫娜様はこれまで数々のことを乗り越えてこられて...紫娜は頑張っていますよ
私は紫娜様の全てを知っているわけではないですが私が握るこの手は...とても暖かい」
頑張って
じゃない
頑張ってるよ
涙も枯れたと思ったのに
泣きながら
でも確かに微笑んでこっちを見てる
私も涙が止まらない
初めてのことが多いな
「でもこの手は家族を殺した...!」
「この手はたくさんの人を救った手です」
「でもこの手で守れなかった...」
「この手がこれからたくさんの人を救います」
「どうして言いきれるの?!」
声を荒らげた
なんにも知らないくせに
どうして知ったような口きくの
「この三週間お世話させて頂きました
西ノ錦家で私ほど紫娜様を知る者はおりません」
たった三週間じゃん
「怯えてる私を気遣っていたじゃないですか
そしていつも声を殺して泣いている
紫娜様はお優しい方です」