第6章 悪夢
目の前は真っ白だった
ただ永遠に続く階段があるだけ
なんで私は登り続けているんだろう
下を見たら目眩がするぐらいに高い所まできた
それでも足をやめない
. . . . .
止まれない
どうしてだろ
見えないぐらい下には紫遊佐がいる
少し後ろには紫遊雅が這いつくばって
汗だくになって登っている
二三段先には
何を呟いているか分からない老人と化した父上がいた
それでも歩をとめない
追い越さなきゃ
何がしたいんだろう
でもここで歩を止めると
きっと潰れちゃう
見放される
最後まで何を言っているか聞き取れなかった
目標を抜かした
目標?
そうだ
本当は違う
血なんて
錦家なんて
本当はただ平凡な家族で生まれたかった
家なんて小さくていい
集落で様付けなんて呼ばれなくていい
父上に愛されたかった
母上に怯えないで甘えたかった
紫遊雅も紫遊佐も
こんな風に笑いながら呼び捨てして
笑いたかった
見上げても
永遠に続く階段は
きっとこれ以上何も無い
こんな悪夢
もう見飽きてる