第1章 出会い
鬱陶しい髪をひとつにまとめる
簪の先にある椿の模様に夕焼けの光が差し込んだ
小さな小川を渡るために作られた小さな橋
両側には様々な店が立ち並び薄暗くなった今でも
賑わいを見せ、夕焼けへの道になっていた
銀の糸で紡いだような光には赤い花弁が空に咲き乱れている
今日は少し肌寒い
視線を感じる元凶である狼の面を外しながらゆっくり息を吸ってみる
少し期待した自分がバカみたい
そうだよね
もう違うんだから
目を瞑る
山に囲まれて家が何軒も建っていた
竹林の中で響く風の音は何度もこだまし、
日が差す時間はとても短かったけど、
霧がかってる朝焼けは今も忘れない
目を開けた
景色なんてそんなに変わらないものね
3年間なにも手入れしていない面を見ると可哀想になる 鼻先は削れ、真っ白だった面が少し黄ばんで目の周りの青い漆はもう目立たなくなっていた
あともうちょっとで終わるから
それまで待ってて
ゆっくり息を吐いて
もう一度面をつけた