第10章 鬼と花
「お嬢さん方、何か探し物かい?」
「この子が使うような簪を探しているんです」
街を歩いていると外に出ていた店主の人に声をかけられた
雨が降っていた時と変わらず、人の群れに少し酔いながらも招かれて入ってみた店内はレトロな雰囲気があった
初めて見るのか椿の目は輝いている
レトロながらも、売っている商品は硝子細工などの装飾品で簪も売っていた
「お嬢さんどれか気に入ったものあるかい?」
簪の他にも様々なものがある
リボンや櫛など
椿ぐらいの歳だとおかっぱな子が多く見られるが、周りを見ると袴姿に大きなリボンをつけている子が多い
私は...髪が銀髪だから似合わない
「これにする!」
椿の目線に止まったものは鬼灯がほどこされた簪だった
「お目が高いねお嬢さん 今つけていくかい?」
「じゃあそうさせていただきます
お駄賃は?」
店主にお金を払った後、
店主は椿に簪の付け方を教えていた
窓の外を見る
サンサンとした光は窓を通り抜け、
硝子細工を輝かせていた
この街の人は昨晩の鬼騒動などは気にしていないのか
それとも気にするほど暇ではないのか
私の髪のせいかもしれないけど
椿を探しているときも珠世さんを探しているときも
誰一人気にしてくれなかった
この街の人は少し冷たいのかもしれない
アルさんは
椿を探している時も
鬼になった時も
優しさと温かさを持っていた
あと少し早く行っていれば
彼は鬼になっていなかった