第4章 夢の中に生きる者
「名無しなら大丈夫だ。あの娘は強いからな。むしろ、オレはあのまま一生嫁を取らずに独り身でいそうな扉間が心配ぞ…」
「ふふ、扉間も大丈夫ですよ。ああ見えて気の利く優しい男です。いつか、扉間にも彼を理解してくれる素敵な女性が現れますよ」
そうだな、と返事を返せばミトの満足そうに微笑む顔が目に入る。
自分の事を理解し、共にこれからの未来を歩んで行ってくれる。
本当に良い女と巡り合えたと常々そう思う。
***
ミトさんと別れてすぐに部屋へと戻り、もう一度あの夢を思い出す。
自分も彼も皆が楽しそうに笑っている姿が頭に浮かぶ。
それだけで顔が綻ぶのを感じる。
頬を伝う涙が握っていた拳にポツリと落ちる。
自分は彼に愛されて、そして人を愛する事を教わった。
それは、何があろうとも変わる事のない大切な真実。
皆がそれぞれ心に想い描く幸せは同じものではない。
その幸せが同じでない限り、これから先もまだまだ戦いは続く。
彼が守りたいと願った一族や仲間を守りたい。
だから、いつかこの身が朽ちるその時までもう少しだけ生きる意味を探してみようと思った。