第2章 春の波
『あ、研磨!』
気付かれないよう去ろうとしたところ、クイと袖を引っ張られ止められる
「ーーっ」
ガサゴソと鞄を漁り、なにやら可愛らしい包装と取り出す
『す、少ないけど、昨日のお礼…っ』
「…え?」
おれに…?
何の…?
周囲がざわつくのも気にせず、は続ける
『昨日、送ってくれて、ありがとう』
困ったように照れ笑いするに
こっちは思考が追いつかない
彼女の、見たこともない表情に
周囲の男子も、そして女子までもが息を飲む
その中で、
「…え、一緒に帰ってたの…?と……孤爪くんが……?」
ふと、誰かが零した
『?うん、そうなの!』
純粋過ぎたが為に、この場にいる彼女だけが
その問いの意味を理解していなかった
「…そういえば言ってたもんね…。孤爪と仲良くなりたいって」
別の子がそう発言した
昨日の昼間にあった会話を覚えていたんだ
そしてまた別の者が
「そうだよね、は本当、優しいもんね」
悪意なく零れた言葉なのだろう
発言した者の顔は安堵の色が窺える
おれだって自分が周りにどう思われてるかなんてずっと前から理解してるし
どうってことない、日常茶飯事…
思考に反して瞼は落ち、居心地の悪さから身体が縮こまる
『それ、どういう意味?』
「…ーー!」
凛とした声の中には
昨日とは異なる、彼女の怒りの音が
微かに混ざっていた