第5章 ブーゲンビリア-Fseries-
クッションをどけて、翔ちゃんを見てみたら、顔が真っ赤になってた。
「…どしたの?」
「う、うるさいねっ智くんはっ」
「うるさいって…言えって言ったの翔ちゃんじゃん…」
「わーかったからっ!」
そう言って、またクッションを俺の顔に乗っけた。
「もが…」
また視界が真っ暗になって。
でも、寝転んでる俺の手を、翔ちゃんがぎゅっと握った。
「…照れてるの…?」
「う、うん…」
なんだよ…自分で好きな所言えって言ったくせに、激テレなんて世界一可愛いじゃねえか。
またそっと、クッションをどけて翔ちゃんを見てみた。
ぎゅっと手を握りながら、顔を手のひらで扇いでる。
「…俺は翔ちゃんが翔ちゃんだから、好きなんだよ」
「……うん」
ぎゅううっと握ってる手に、力が入った。
「俺…智くんに謝らなきゃいけないことがある」
「ん?」
「実は…俺…」
そう言って、翔ちゃんはちょっと俯いた。
「な…なに…?翔ちゃん…」
「あのね…」
そう言って口元を手で覆った。
暫く、そのままの姿勢で黙ってたんだけど、急に立ち上がった。
「ど、どうした?」
「ごめ…」
いきなり翔ちゃんは走ってリビングから出ていった。