第8章 フェアリー
プルソン君が、喋りたいとき、しゃべる代わりにトランペットを吹いていると知ったのは、彼と知り合って、そんなにたたない頃。
その日もプルソン君を探して構内を歩いていた。
廊下の先にプルソン君を見かけて、声をかけようとしたが、認識阻害があるにも関わらず、こそこそと、行動してるものだから、理由が知りたくて、後をつけた。
すると、屋上に上がっていき、そこで、トランペットを吹き出した。
その音色に、迫力に、感激してしまった。
プルソン君がひとしきり吹き終わったとき、思わず、スタンデングオベーションをしてしまった。
「な、何でまた居るの!?」
「凄かった。凄く、感動した。」
それから、隠したがったプルソン君には悪いけど、吹き始める頃には特等席に陣取って、鑑賞するのが、余裕のあるときの私の日課になった。
それから、暫くして、
「僕だけ、聴かれてるのは不公平だよ。
…ミユキさんも何か披露してくれない?」
「えっ?……えーっと。じゃあ、歌でも。」
そんな、意地悪から来る提案を受けた。
人間界の歌を歌うのはだめだと思うから、メロディーだけ。
オペラのように歌い始める。
最初は、小さいメロディーから。
徐々に喉が温まってきて、伸びのある音がでた。
ああ、こんなにも音を紡ぐのは楽しかったのか。
身体が、空気中に溶けていくような、一体感。
最高のエクスタシー。
はぁー歌いきった。
振り替えれば、プルソン君がボッーと立ち尽くしていた。
「プルソン君?」
「す、凄かった!!」
べた褒めされて、恐縮した。
次の日から、学校では、フェアリーの話題で持ちきりだったとは知らないミユキだった。