• テキストサイズ

黄金の草原

第9章 大方は真しくあひしらひて、偏に信ぜず、また疑い嘲るべからず




「お嬢さん、俺の目を見て」


公任は少女の顎を持ち上げ、その眼を覗く。少女の目は依然、恐怖に支配され、雫が溢れた。
しかし、少女は公任の青い目に魅せられて、その強張った表情が和らぐ。

公任はそっと手を離すと、少女に優しく話しかける。


「瑞雲と子供たちは何処にいる?」


少女はゆっくりと、しかしはっきり答える。


「この草庵の北東に、人の手で削られた岩があります。その近くの小道を道なりに進むと、小屋があります。そこに皆おります」
「わかった。ありがとう」
「……あのっ」


立ち上がろうとした公任の着物の裾を、少女は掴んだ。


「どうかっ……どうか息子を助けてください。お願いします、お願いします……」


震える小さな手を、公任はそっと両手で包み込んだ。


「必ず」


/ 116ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp