第2章 失いたくないあなただから
「初めからそう言えばいいんだ」
師範はそう言うと布団に寝転がる。
そして、バッと両腕を私に向けて伸ばした。
「来い」
急に色気を醸し出した師範に、心の臓がドキッと高鳴った。いやこれ、眠れないかもしれない。
いそいそと師範の胸元に「失礼します……」と言いながら寝転がると、布団を掛けられた。
師範はフッ!と燭台のロウソクを消すと、
私に抱きついてくる。
……あ、なんだろうこれ。
凄く安心する。
私も知らず知らずのうちに、
師範に抱きついていた。
「師範……伊黒さん……好きです。大好きです。ずっと、私を離さないでいてくださいね。」
「ああ、案ずるな。お前を手放すことなど一生無い。あの世でも来世でも共にいよう」
真っ暗で何も見えない中、私達は
どちらからともなく唇を重ねた。
次の日の朝、目覚めがものすごく良かったのは、私だけの秘密である。
~完~