第2章 失いたくないあなただから
「いいか、俺は任務を終えたと同時にお前が鬼にやられて負傷したと言伝られたのだ。お前が死ぬのではないかと、兎に角焦った。分かるか?俺の気持ちが。だと言うのにお前は胡蝶めの屋敷でケロッとして何事もないようにベッドで寝ていた。心底安心した。だが、お前を失うかもしれないと底知れない恐怖に襲われた俺の気持ちをお前は汲もうともせず一人で寝ろと言うのか?お前を抱きしめて寝ないと俺は安心して眠れないというのにお前は一人でグースカ寝れると言うのか」
ネチネチネチネチ。
ああ、これが師範のネチネチ攻撃か。
蜜璃ちゃんなら「伊黒さんネチネチしてて素敵」とか言うのだろうが、直に浴びせられるとかなりイヤだこれ。
「わ、分かりましたすみません師範。
ご心配をおかけしました。
今日は私を抱きしめて寝てください……」
いや、もうほんと。これ以上余計なことを言おうものならネチネチがいつまでも終わらない気がする。