第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
ふ、と目が覚めた。
ゴソゴソと布団から這い出て、懐中時計を確認すると、針は卯の刻をさしている。
布団を畳んで部屋から出ると、外はまだ暗くて。空には星々が散りばめられていた。
井戸で水を汲んでから顔をバシャバシャと洗い、さっぱりした気持ちで台所へと向かう。
「朝餉は、お帰りになる師範の好きなとろろ昆布汁を添えよう」
私の師範は柱で、蛇柱を任されている。
今も私がのうのうと寝ていた間、師範は鬼殺に駆り出されている。
何日も帰ってこないなんてザラだし……でも、今日は帰ってくるって鴉に言伝してくれたから安心して朝餉が作れる。
お米を炊いて、鮭を焼く。パタパタとうちわで扇ぎながらとろろ昆布汁の準備。
こうしてバタバタしていても、思考は飛んでしまう。
どうして師範は、私を継子にしたのか……と。
柱の継子はとても優秀でないと選ばれない、とは聞いたものの、私はそんなに能力が高いとは思えない。
「師範の考えてること、私には分からないなぁ」