第1章 甘い?甘くない?……やっぱり、甘い
と、その時玄関からガラガラと戸が開く音が聞こえた。師範だ!
慌てて玄関まで行き、出迎える。
「お帰りなさいませ師範」
「ああ。」
師範は羽織を脱いで私に渡す。
それを受け取って、師範を居間へとお連れする。
「随分早起きだな。まだ辰の刻にもなっていない」
「目が覚めてしまったもので…。あ、朝餉できてますが召し上がられますか?」
「ああ、そうだな。」
ぺこりとお辞儀をしてから台所へ戻る。
少食の師範のために、量は少なめに作っている。それを居間へと持って行き、二人で「いただきます」と手を合わせた。
「ああ、そうだ。これをやる」
師範がそう言って懐から何か箱のようなものを取りだした。不思議に思いつつそれを受け取る。