第1章 レモンティーの行方【ミスラ】冷→甘
「…ミスラ?」
「なんでしょう、賢者様」
「何をしているんですか?」
「眠れそうな場所を探していました」
「何故、私の部屋の前で横たわっているんですか?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「賢者ちゃんに悪いことをしてしもうた」
「賢者ちゃん ごめんね」
可愛らしい見た目の双子は大して悪びれた様子もなく謝罪を口にした。
口元には笑みすら浮かべている。
「何故ミスラが私の部屋の前で寝ているんですか!」
早朝、魔法舎の食堂で食い気味に双子に詰め寄った。優雅に朝食をとっていたが構いはしない。先程のミスラの行動はどうも彼らの仕業らしい。
「ほれ、賢者の力は大いなる厄災の奇妙な傷を緩和させることが出来るじゃろ?」
「ミスラに教えてあげたんじゃ」
「賢者の近くであれば眠れるのではないかと」
嬉嬉として説明した双子にやはり謝罪の気持ちはないようだ。
「…それで部屋の前にいたんですね」
脱力した体を椅子に預け、ふぅとため息を零した。
爽やかな朝には相応しくない重いため息。
先程のやり取りを思い出してみる。
私の部屋の前の廊下にミスラは持参した枕に頭を預け横になっていたのだ。
食堂に行く支度をし、扉を開けて驚いた私の顔はさぞ酷いものだっただろう。
開けた拍子に当たった体はムクリと起き上がり眠そうな目を擦る。
「…ミスラ?」
「なんでしょう、賢者様」
ミスラとはそう何度も話をした覚えはない。
何を考えているのか分からない上に賢者の書にも要注意人物だと書いてあった。
見た目は美青年、丁寧な話し方で一見怖いイメージはない。だけど「殺してやりますよ」が口癖でオーエンやオズにいきなり奇襲を仕掛けるあたり北の魔法使いの気性をまざまざと見せつけられていた。
賢者としてミスラを知ろうと思いつつも南や西の魔法使い達のように上手くはいかず自然と距離が出来ていた。
そんな彼が突然目の前に現れたものだから動揺を隠すことも出来ず情けない声を上げたのが今朝の話。
「ふぅ…」
もう一度大きくため息をついた。