第4章 君が笑顔の日【不死川実弥】
「紗英さん!…良かった、気が付きましたか…?」
『私…倒れて…?』
徐々に意識がハッキリしてきた。…どうやら胡蝶様のお屋敷で寝かされているようだ。
「話してたら急に…すみません、無理させましたかね…」
恐らく会話中に突然倒れた私を玄弥さんが蝶屋敷へ運び、目が覚めるまでずっとついていて下さったのだろう。
『すみません、驚かせてしまいましたね。…妊娠中はよくある事みたいです。大丈夫ですよ。私も、この子も。…玄弥さんがいてくださって良かったです。』
「…そう、ですか。…良かった…」
強張っていた顔が安堵の表情に包まれる。
「紗英!!…ーーーっ!!!?」
知らせを聞いたのか実弥様が走ってくるやいなや、私の横に居た玄弥さんの姿を見て青筋を立てた。
「…なんで、てめぇが此処にいやがる…!」
「あ…、俺…っ」
『倒れた私を玄弥さんが運んで下さったんですよ。目が覚めるまでずっと付き添って下さいました。』
私の言葉を聞き、実弥様はグッと言葉を飲み込んだように見えた。
「……っ、そうかよ…、…世話になったなァ」
玄弥さんへは視線を向けないまま、小さく礼を述べた。
「…俺、もう行きます……、あの…お大事に…」
やはり居心地が悪いのか、玄弥さんは足早に去ろうとした。
『玄弥さん…!』
呼び止めれば、少し此方へ振り返り視線を合わせてくれた。
『…ありがとうございました。子どもが産まれたら、きっと遊びにいらして下さいね。』
実弥様から怒気を感じたが、構う事なく続けた。
『…この子と、遊んでやって下さいね』
玄弥さんは肯定するでも否定するでもなく、小さな声でありがとうございます。と言うとそのまま出て行ってしまった。
「……お前なァ…」
実弥様の怒気を含む声が聞こえる…ー。
『すみません、勝手な事言って…でも、…玄弥さんは私にとっても弟です。…この子の、家族…ですから』
実弥様の怒気はいつの間にか薄れ、小さく溜息をついた。
「…お前には、敵わねえよ。本当…。」
そう言ってお腹に手を当てゆっくりと撫でてくれる。
「何事もなくて安心した…、呼びたきゃいつでもあいつを呼べばいい。」
いつもと変わらない表情の奥に、暖かいものが見えた気がした。
その時…ーー。