第1章 美術室の悪戯【宇髄天元】
美術室で居残り中。
なんでか…?
ここ2日程、風邪をひいて学校を休んでいたから今日までに提出しなきゃいけない課題が終わってないから…。
『はぁぁぁ〜…ーーー。』
花瓶と果物を模写してる訳だけど…これがまあ…進まない。何故なら美術が苦手だから。とにかく絵を描くのが苦手な私には苦行でしかない。
美術教師が彼氏だってゆうのに…。ちょっと自嘲気味に笑ってから気を取り直して鉛筆を走らせる。
苦手なりにも後ちょっとで終わりそうだし。
「な〜に、派手にため息ついてやがんだ?」
真後ろ、というより耳に息が吹きかかりそうな距離で話しかけてきたその人。
『!!!!ぅ、宇髄先生!!?』
勢いよくその声の方向へ顔を向ければ、これまた至近距離で鼻と鼻がぶつかってしまうんじゃないかと思った。
「なんだよ、まだ終わってねーの?」
ケラケラと笑いながら視線は私の方ではなく、私が描いていた絵の方に向けられる。
『やだっ!!!見ないで下さいっ!』
スケッチブックを覆うように身体で隠した。
(うぅ〜…ーー!!!恥ずかしい…こんな下手な絵…)
「…あのなぁ、お前…俺が先生なんだから、どっちみち後で評価するからゆっくり見るっつーの!」
全くもって仰る通りだ。一字一句間違いない。
『…でも…』
スケッチブックを覆うように突っ伏したままボソっと呟く。
喩えそうだとしても、やはり恥ずかしい。好きな人に見られるのにこんなに下手で。しかも…美術教師の彼女なのに…。
なんだか情けない気持ちでいっぱいだ。
「………上手く描くコツ、教えてやろうか?」
先生のその言葉で弾かれるように起き上がった。