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君がため【鬼滅の刃】

第15章 恋スル乙女【竈門炭治郎】




気付いてしまった。

カナヲの炭治郎くんを見つめる視線が…、好きな人に向けるそれだという事に。

カナヲのその顔は……恋する女の子の顔だった。


しのぶの屋敷で手伝いをしに訪れた時、偶然…炭治郎くんとしのぶの継子のカナヲが縁側で話している姿を見かけた。


カナエとしのぶが人買いに売られていたカナヲを連れ去ってきたという話を聞いた時はまあまあ驚いた。

初めてカナエがカナヲを紹介してくれた時の事もよく覚えている。

可愛い小さな女の子。大きな…感情の伴っていない、その瞳。この瞳には…一体世界はどんな風に映っているのだろう?と思ったものだ。


こちらから話しかけても、あまり返事をする事もなく、ただニコニコとしているだけだったカナヲが、ある時から少しずつ自分の感情を口にし始め、最近では私にもよく話しかけてくれるようになった。


その変化は…小さな頃から見続けてきた私としてはとてもうれしい変化だった。


カナエが見たら、凄く喜んだだろうな。




きっと、炭治郎くん達と関わるようになったからだと私もしのぶも思っている。



そして、炭治郎くんに「恋」をしたカナヲは…


どんどん可愛く…愛らしく成長し始めていた。





「あら。やきもちですか?」


しのぶが薬を調合しながら若干楽しそうに尋ねてくる。


『…違いますよ。そんなんじゃありません。』


ずっと窓の外の2人を見ていた私は、しのぶの方へと視線を戻し止まっていた手を動かし始めた。


「カナヲと炭治郎くんは仲が良いですからね〜。それにカナヲは炭治郎くんに気がありそうですし。気になりますよね〜。」



私の言葉を無視する上に、煽るような事を実に楽しそうに言ってくるしのぶ。


『…同期同士、仲が良いのは良い事じゃないですか。似た年頃の男女ですもの、気も合うでしょう。』


ムキになったつもりはないが、少し語尾強めに答えてしまい…だいぶ後悔した。


なぜなら…しのぶが声を殺すように肩を震わせて笑っているから…。


「カナヲだって知っていますよ。紗英さんと炭治郎くんの関係を。…それでも恋する気持ちを止める術がないというのが…若さですかねえ?」


…あなただって18歳で十分若いわよ。


しのぶの言葉に苦笑いしつつ、またしても視線は…

窓の外の2人へと…向かってしまうのだった。
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