第13章 桜色に染まれば【煉獄杏寿郎】
幼馴染みというのも…少しばかり厄介なのかも知れない。
晴れて、杏寿郎さんの『嫁』として煉獄家に嫁いだものの。
半年経った今も、未だ私の身体は『生娘』のまま。
幼い時から一緒にいすぎて、そういう目で見てもらえていないのでは…と、不安になる。
とても大切にして頂いているとは……
思うんだけれどね。
名ばかりの『嫁』なのではないか。…と思ってしまう。
「紗英、戻ったぞ!」
『お戻りなさいませ、杏寿郎さん!』
朝食の拵えをしているところへ、杏寿郎さんが夜警から帰ってこられた。…毎朝、この瞬間とてつもなく安堵する。
最初の頃は夜警で不在の夜、もし…と思ったら眠れなかった。
宇髄さんのお嫁様方に、ちらっとそんな不安を吐露したら須磨さんは、わかりますよおぉ!と泣きながら賛同してくださり。
まきをさんからは、アンタの旦那はそんなに弱いのか!?と怒られてしまい。
雛鶴さんは優しく…そうね、と言って笑って下さった。
けれど、3人とも…最終的には生きて戻ると信じるしかないのよと仰った。
そのお顔は心底、宇髄さんを信じ慕っている様子だった。
「今朝の朝食はなんだ?」
肩越しから鍋を覗き込み、杏寿郎さんの息が耳にかかるほど近くに顔がやってきて思わずビクッと肩を揺らしてしまう。
『!!け…っ…今朝は、お味噌と…焼鮭です。…あと佃煮と…。』
熱を持ち赤くなる顔。…耳まで真っ赤なんじゃないだろうか。
もしかして…いつまでも小娘みたいな態度だから、夜の営みもないのかしら…?
「美味そうだ!着替えてこよう!」
『あ…っ、はい!お手伝いします!』
「いや、構わない。配膳していてくれ!」
矢継ぎ早に話終え、自室へ向かわれてしまう背中を見送る。
台所に1人取り残され…ぼんやりしていたら、お味噌を少し沸騰させてしまい慌てて鍋を火から下ろした。