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君がため【鬼滅の刃】

第11章 櫛を贈らせて【竈門炭治郎】




『…私、先にお婆ちゃんになっちゃうよ…?』

「うん、…可愛いお婆ちゃんになるだろうね。」

『…いいの…?』

「良いよ。…ずっと、一緒に居よう。」


零れる涙すら綺麗だ。…嬉しい涙なら、この先…何度でも流して欲しい。




『……櫛、受け取らせて…。』

「うん、…ありがとう。」


抱きしめれば、優しくて甘い…匂いがする。


愛されてる…ーー、不安になる時がこの先きたとしても、こうやって、毎回確かめれば良い。


いつだって…ここが俺の『帰る場所』だ。



そして、いつか…

全てが終わったら…きっと禰豆子も人間に戻って…

3人で、家族の待つ山に帰ろう。


その時にはきっと紗英さんの髪は長くなってて…俺の贈る櫛を、その髪に通してくれている筈だ。





ーーーーーーーーーーー



「仲直りしたのねー!!はぁーーーーっ!!!そりゃ良かったねーーーーー!!!!」


善逸と伊之助を連れ、紗英さんの家に帰って来たら善逸がキィーキィーと喚きながらも喜んでくれた。



「おい!!紗英!!飯が足りねえ!!!」


それぞれ騒がしいけれど、やっといつもの日常が戻ってきた気がする。



「…紗英さん、髪切った日…ちょっと哀しい匂いがしてたのは…どうして?」


最後に残った蟠りを無くしたくて、紗英さんに問いかけてみた。


『え?…ああ…、せっかく伸ばした髪を切ってしまったのは流石にちょっと悲しかったの。…でも、炭治郎くんが似合ってるって言ってくれて、嬉しかったわ!』


ニッコリ笑って、禰豆子の髪を緩く編み込んで遊んでいる。



……これもやっぱり、俺が勝手に嫉妬してただけなんだ。…まだまだ…未熟者だなあ。


『…炭治郎くん。』


ちょいちょいと手招きされ、紗英さんに近付いた。


『……これからは、貴方の為に髪を伸ばすわ。』


耳打ちするように小声で囁き、優しく微笑んで…そして、あの優しく甘い匂いに包まれる。



「ちょっとそこ!!イチャイチャしないでよ!!いやーー!炭治郎のくせにぃーーーー!」


耳の良い善逸にはバッチリ聴こえていたようで汚い高音で喚いた。


「…紗英さん」

『なに?』

「…好きだよ」


櫛が通される日は…きっとそう遠くない。






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