第4章 ぬくもり
家族と暮らしてた時には、きっと当たり前だったこと
目に見えるふれあい
目に見えないふれあい
いろんな、ぬくもり
ガラガラー…
「はい、いらっしゃーい!」
「こんばんは~。女将さん、三人、空いてる?」
「あらぁ、しばらくだねぇ。元気だった?奥の座敷でいいかい?」
「うん。よーやく山場越えてさぁ…」
笑う声が重なってる。
賑やかになって、さらに熱が増す店内。
いろんないい匂いに包まれて
時々かわいい足音も聴こえるし
何てことないのに、酒がしみじみウマい。
「ハァ~…」
喉を通っては
体だけじゃなく、心まで染み渡っていくようで
「大ちゃん、大ちゃんっ」
「ん?」
ミキが階段のところで手招きしてる。
「なに?」
「これ、あげる」
「?」
手に乗っけてくれたのは…チョコ。個包装の、一口サイズのやつ。それも…
一個だけ(笑)。
「さっきの、アイスのお礼!」
「…いいの?」
「母さんに内緒だからね?」
「うん。…ありがと」
これだけのために降りてきたのかな。こっそり階段ソロリソロリって上ってるけど…
「宿題やんないなら店手伝いなー」
「はいぃぃっ!」
バレてる(笑)。
ホント不思議だよね。母ちゃんてどこに目ぇついてんだ?って。ミキの気持ち、よくわかるわ。
「…」
次の休みは、久々に実家帰ろっかなぁ~…。
2015/10/3