第2章 暴君な王様(跡部景吾)
氷帝の王様、といえば学園では誰もが知る存在、生徒会長でもある跡部景吾。彼があるけば跡部様、氷帝コールが学園内に鳴り響くのは至極通常になっていた。だが、そんな彼にも弱点がある。
「……」
「…またかいな、跡部」
王様、という名が呆れたものだ。彼は彼女のこととなるとすぐ弱気になりすぐに部室に引きこもってしまうのだ。これでは部活に差支えが出てしまう。彼をこうしてしまうのはただ一人の人間しかいない。
「…今度はなんやねん」
「… 頼華が、今日一緒に帰れねぇって」
「…それだけの事かい」
頼華、と彼の口から出た名前の彼女。そう、この泣いている跡部景吾の彼女であり前生徒会長である。氷帝学園では唯一の女の生徒会長であった。そんな彼女は同じ敷地内にある高等部の1年生だ。1年とはいえ、すでに高等部の生徒会長なのだが。見た目は普通のどこにでも居そうな女の子である彼女ではあるのだが、頭は切れるし仕事は出来る。勉学といえば彼女の上に勝るものなどおらず、完璧主義者。ただ、欠点があるとすればクールすぎて冷たいような態度を取ってしまうこととプライベートになるとかなりまぁ口が悪いのであった。
「また生徒会の仕事で帰れへんのやろ?」
「…そうはそうなんだが…」
「…?」
「…なぜ俺様を優先しない…!」
「…怒るとこそこかいな」
ほら、見てみろ!!と言わんばかりに忍足の目の前に跡部が見せたのはLINEであった。登録している名前の語尾にハートが見えたのはさておいて、跡部が送ったであろう今日部活に顔を出せ一緒に帰るぞ、という返信が
今日生徒会、無理
と、一言返ってきていた。なんともまぁ短い。絵文字や顔文字すらない文章だ。跡部景吾がまだ中学2年のとき─彼女は3年で生徒会長、かつ氷帝男子テニス部のマネージャーも請け負っていたのだ。そんな関係もあり付き合うことになった2人。まぁめちゃくちゃ押しまくったのは跡部だったのだが、というのは置いといて
「…相変わらず冷たいなぁ」
「…冷たいがたまに優しいのが可愛いんだよ…!」
そんな涙目で熱弁されてもなぁと困る忍足を他所に跡部はまたブツブツと独り言を言い出した。あぁ、もうこうなったらしゃあないか、と助けを求めるように跡部の携帯をいじり出した。勿論、この状況を打破する為だ。