第64章 キミなしではいられない(XANXUS)
大柄の男は”XANXUS”と呼ばれているようだが、やはり日本人ではなかったらしい。
少女は如何にも日本人です!って顔つきをしているが、男の方は後ろ姿だけで日本人とは思えなかったから。
黒髪だが、こんな夏の暑い日なのにも関わらず黒いスーツとジャケットを肩に羽織っているから余計にこのカフェでは目立っていた。
暫く他愛もない話をしていた2人だったが、少女が席を立とうとすると先に男が立ち上がり少女に手を差し出していた。少女は男の肩ほどにもない身長で、男がかなり背が高いのだとわかる。
男が少女の腰に手を回したとき、俺は背伸びをしつつそちらをつい見てしまった。綺麗な目鼻立ちをした男の顔。じっと見てしまっていた俺は、男と目が合ってしまった。
男は目が合うやまるで牽制するかのような目付きで、俺を見下しているように思えてならなかった。
2人が店を出て、俺は深いため息をついてテーブルに突っ伏した。
最後に男が見せた殺気の凄まじさたるや。
よほど少女が大切なのだろう。2人が何者なのか俺には分からないし、分かりたくもないが男は間違いなく普通じゃないとだけは分かっていた。
他愛もない話が時折俺の耳に入ってきてはいたが、少女がほぼ話していたのに対し男はほぼ相槌を打っていただけ。
それでも少女にとってはそれが普通なのだろう。少女を見る男の目つきだけは、何よりも優しいものに見えて仕方なかった。
_________
「ありがとう、カフェ付き合ってくれて」
「あぁ」
「でも!ここは日本なんだから、あんまり、その…」
「なんだ」
「…ち、近いのは」
「いい加減慣れろ」
「…もう。」
カフェで思わず口付けたくなりしてしまえば、頼華に近いだのここは日本だのと言われてしまって。
俺はそんなことなんかどうでもいいのだが。
「…また一緒に行ってくれる?」
「あぁ」
「やった!」
ぎゅうと俺の腕に抱きついてくる頼華にまた、怒られるのを承知でキスを落とした。
キミなしではいられない
甘い甘いホイップクリームのような
そんな味もキミなら大丈夫
(…XANXUS!)
(俺がしたかった、じゃ駄目か?)
(…そんな聞き方ずるい)
(はっ、言ってろ)
end
___
とりあえず甘いのが書きたかった!