第63章 SS(色々)
影山飛雄(ハイキュー)
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「…寒い」
11月も下旬に差し掛かり、一気に下がった気温。さすがにマネージャーの私は、動いている彼らと違って寒くてたまらないのだけど。だが今日は最悪なことに、ジャージを忘れてしまっていた。
「あれ?頼華ジャージは?」
「忘れたー」
「マジで!俺の貸すから着ときなよ」
手を擦り合わせていた私に気づいた翔陽がジャージを貸してくれて。少し自分より大きいそれに腕を通した。
「…頼華、」
「あ、影山くん」
「…それ、日向の?」
「え、うん。ジャージ忘れちゃって」
「…そう」
どこか怪訝そうな顔をしている影山くん。眉間に皺を寄せている彼に私は何かしたかなと思う。
「…私、何かした?」
「え?」
彼が好きで、彼も私を好いてくれて付き合ってるのだけれど私にはまだ影山くんがあまり分からない。彼の表情からは何も読み取れないから。
「なんか、ごめんね」
そう伝えてマネージャー業に戻ろうとしたけれど、それは彼の手によって止められた。
「か、影山くん…?」
「…悪い、その…」
「…うん?」
「…嫉妬、した」
「…え」
「なんで俺に言ってくんないのかな、とか考えて。日向のジャージ着てるし…俺、彼氏なのに」
「…っ!」
思いもよらなかった彼の発言に少し動揺した。いつも飄々としている彼が、翔陽のジャージを着ている私に嫉妬しているなんて。
「…影山くんのジャージが着たいな」
「っ…」
「…だめ、かな?」
「当たり前だろ」
「え、」
「俺のジャージじゃないとダメに決まってる」
翔陽のジャージを脱げば影山くんが自分のジャージを私に羽織らせてくれた。彼の匂いに包まれて、抱き締められてる気がして思わず口元が緩んでしまう。
「…その顔反則だろ」
「え…わ!!」
ぐいと手を引っ張られて、気づけば彼に抱き締められていて。さらに彼の匂いが濃くなった。
「名前」
「え?」
「…俺、頼華に名前で呼んで欲しいんだけど」
「…飛雄くん」
「くん、はいらねぇ」
「…飛雄」
「それがいいな」
体育館の中心であいをさけぶ
お前ら部活中だぞ!と大地さんが怒りに来るまで、私は飛雄の腕の中にいた。
end