第61章 てのひら(玄奘三蔵)
「…ねぇ、まだつかないの」
「ンなこと言ったってつかねーだろ」
八「道悪いですけど大丈夫ですか?頼華さん」
「八戒の運転は平気だけど…座る所がどうにも勝手悪い」
「俺かよ」
悟「こんな道悪ぃ所でもまだ頼華離さねぇのかよ」
空「三蔵って何気に空気読めない感じ?」
「お前に言われる筋合いねぇよ猿」
ガタガタと悪い道の中、今日も今日とて三蔵の膝の上。こんな悪い道の上なら、尚更に居心地悪い。降ろしてくれない三蔵に呆れる反面、自分から降りない自分自身に呆れる反面って感じ。
まぁ降ろしてくれなくても、自分から降りる気はないんだけれども。
気づけば、見つけた村についた頃にはすっかり夜だった。
「やっと宿ついたー…」
「疲れたか」
「あんな山道、疲れないはずないでしょ…」
いつもの様に三蔵と同じ部屋に入ると同時に、山道の疲れが来たのかベッドにそのまま倒れ込んだ。
「…眠い」
「そのまま寝んな。風呂いくぞ」
「えー…明日でいいよ」
「何言ってんだ。汚れてるだろうが。」
言われてみれば確かに。山道の中でも”三蔵一行!魔天経文を頂きに来た!”なんて、毎回毎回御足労なことでって程に襲いかかってきた連中を薙ぎ倒していったんだっけ、なんて。
「…入るけどひとりで「ふたりで、な」」
「まだ言ってる途中なんですけど!?」
「拒否権ねぇぞ」
「…ですよねー」
半拉致が如く、風呂場に直行された。
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「…はぁ、きもちー」
「おい頼華、寝るなよ。」
「………寝ませんよ!」
「なんだ今の間は」
「べつにー」
ちゃぷちゃぷと動く度に揺れる湯船。ふたりで入るにはギリギリのスペースの湯船の中で、三蔵と向き合って入っててその距離は僅か50cm足らず。
目の前の三蔵は、髪が濡れていてかきあげる事に滴る水滴が湯船に落ちていて、色っぽく感じてつい目を逸らしてしまう。
「…おい、なんで目逸らす」
「いやぁ…ナンデデショー」
「ったく…」
じゃぶ、とお湯の中で手を引っ張られて気づけば三蔵の腕の中にいた。