第58章 光の姫(ゾロ)
「んー!今日は洗濯日和!!」
しばらく雨が続いていた航路だったが、朝には止むとナミが言っていて。その通りに、今日は久しぶりの快晴。
溜め込んでいた洗濯物を一気に洗って、それを持って甲板へ出る。
パンパンとシワを伸ばしてから1枚1枚丁寧に干していく。
「…あ、これ」
自分の部屋にある洗濯物を洗ったつもりだったけれど、いつの間にか紛れ込んでいたそれ。ゾロの服だ。
彼の服を手に取れば、つい、昨夜のことが思い出される。
「…何考えてんの私!」
ぶんぶん、と頭を降って。そういや上半身裸のまま、私の部屋を出たよな、なんて考えてしまう。
洗濯したはずのそれから、彼の匂いがした気がして思わず握り締めてしまう。
「…っククク、何してんだお前」
「え…ぞ、ゾロ!??」
「シワになんぞ、それ」
ゾロに言われて、慌てて握りしめていた服のシワを伸ばして干した。
「…もしかして、見てた?」
「あぁ。最初から」
「ちょっと!声かけてよ!!」
「いやぁ、悪ぃ。つい、な」
何時間か前に私の部屋を出たゾロは、風呂に入ったのだろう頭をワシワシと拭きながら私の前にいて。彼の頭から滴る水に、どくどくと鼓動が跳ねる。
「…なんて顔(つら)してんだ」
「…へ?」
急に腕を引かれたと思ったら、目の前にはぶ厚い鍛え上げられた彼の胸板があってどうにも落ち着かない。
「…ンな顔、おれ以外に見せんな」
「…ゾロにしか見せないよ」
「ならいい。」
甲板で抱きしめ合う私たちの間を、心地良く海風が吹き抜けた。
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「干し終わったか?」
「うん!今日はこれでおわり!」
「じゃあ、ちょっと付き合え」
「ん?いいよ?」
そう言えば壁に背中を預けて座り込むゾロ。
「ん。」
「…え、」
「来いよ」
私に伸ばされた手を掴めば、あぐらをかいた彼に横抱きにされて。
「…少し、寝る。」
「…うん」
「だからここにいろ」
たぶん昼寝に付き合えってことだな、と彼に身体を預けた。
昼寝には、絶好の日和だからな、なんて。