第54章 似た者同士(男鹿辰巳)
「だー!あぶ!!」
全裸の子供は仁王立ちで勝者である少女を指さしていた。
「いぇーい!さすがベルちゃん分かってるー!」
「また俺の負けかよ!?」
「辰巳の、負けー!私が、勝ったの!この私が!」
「うるせー!ベル坊、お前頼華に甘すぎねーか!?」
ここは泣く子も黙る石矢魔高校の屋上。ぎゃいぎゃいと言い合う男女と赤ん坊。
ヒ「相変わらず仲がいいな。あの二人は。見ていて飽きん。」
古「俺はもう見飽きましたよ、ヒルダさん…」
「おい、ベル坊!お前の好きなコロッケだぞ!?」
「そんなものに負けるはずないじゃない、私が作ったコロッケの方が美味しいもんねーベルちゃん!」
「だぁ!あぶ、ば!!」
男鹿がいつもの店で買ってきたコロッケと、頼華が作ってきたコロッケ。どちらをベル坊は選ぶのかというどうでもいいような内容で勝負しているふたりを見て、古市は平和すぎだろ、なんて考えていた。
ヒ「…ふむ、何か来たようだな」
けたたましく鳴り響くバイク音。どうやらまた、面白いことがありそうだとヒルダは思っていた。
「男鹿辰巳はいるかぁ!!!」
「うるせー、誰だよあいつら」
古「…げ、男鹿。あいつら昨日の…」
「昨日?…あー、俺なんかしたっけ」
古「お前が喧嘩買ったんだろうが!?」
「いちいち覚えてねーよ」
古市の言う通り、昨日勝手に突っかかってきたから殴り返して土下座させただけなのだが。その連中が仕返しとばかりに、石矢魔に乗り込んできたというわけで。
仕方ないとばかりに、校庭へ出向く。
「お前に会いたかったぜ、男鹿辰巳」
「なんで頼華まで着いてきてんの」
「なんか楽しそうだしベルちゃんもいるし」
「だー!!!」
「昨日の俺の喧嘩だから、俺がやる」
「そもそも辰巳アホだから覚えてるわけない」
「誰がアホだと頼華!!」
「アホだからアホなのよ、バカ辰巳!」
「バカまで言いやがったな、このやろ!」
「おい!無視すんな!!」
「「うるせぇ!黙れ!/うっさい!黙れ!」」
古「うわー、えげつな…」
ヒ「やはり面白いな、人間は」
地面にめり込みまくって顔がぼこぼこな人間たちは、おぼえてろ!と捨て台詞を吐いて逃げるように去っていった。