第51章 心癒場所(玄奘三蔵)
おまけ︎✿
「…えーっと、これは何かな」
「何がだうるせぇな」
「なんで私は三蔵の膝の上なのかな」
「あ?知らね」
「なら降ろしてよ阿呆三蔵」
「黙ってねぇと殺すぞ」
「朝から俺の前で見せつけやがってよー」
「いいじゃないですか、頼華さんと三蔵が仲が良いのは」
「喧嘩するほど仲が良い、だっけ?」
いつもなら悟浄と悟空に挟まれているはずのジープの中。何故か三蔵の膝の上に乗せられている。
「俺の上で一々騒ぐな馬鹿」
「はぁ!?三蔵の方が馬鹿じゃん!」
「んだと!?黙らせるぞ、昨日のように」
「う……それはやめて」
昨日の夜を思い出したのか、先程まで暴れまくっていた頼華は真っ赤になり大人しくなった。
「昨日の夜なんかあったのか?」
「え、な、なんのことかなー」
「ふふ、悟空にはまだ早いですよ」
「確かに餓鬼にはまだ早いな」
「悟浄も八戒も子供扱いすんな!!」
「…三蔵ずるい」
「言ってろ。」
にやにやしながら言う三蔵に、人の気も知らないで、と思う。
「…馬鹿、阿呆、変態三蔵法師」
「ほぉ…そんなにまた黙らせられてぇか」
「…玄奘」
「…それでいい」
彼女の紡ぐ”玄奘”という俺の名前に、居心地がいい。
酒も、煙草も、博打も嗜む破戒僧なんだ。
だから、今目の前にいる彼女を手に入れても俺は変わらない。
むしろ、俺にとっては煙草と同じ必要なものだから。
「俺が殺すまでちゃんと生きろよ」
それは、彼の不器用な愛情表現。つまり、死ぬなということ。
「…大丈夫。玄奘の隣にずっと居るから」
俺の心の闇を光らせるのは、頼華、たったひとりだけ。
ほんとにend