第6章 その罪ごと(跡部景吾)
跡部side
小さい頃から、何不自由なく暮らし大切に育てられてきた。
付き人は当たり前で。俺が指を鳴らせばすぐ様こちらに来る。
そんな俺も日本に戻って、氷帝のテニス部を乗っ取り。面白そうな奴等ばかりが集まったテニス部。
マネージャーも数十人居たので、正レギュラーと準レギュラーとに分けた。俺目当てに入ってきたのであろうマネージャーは、ハードな仕事に耐え切れず何人も辞めていった。
そんな中、ただただ仕事に勤しむ女がいた。
龍ヶ崎頼華───彼女は萩之介と幼馴染らしい。
萩之介と話す彼女は楽しそうで。忍足や向日、他の部員たちともよく話していた彼女だが、俺は彼女と真面に話した事は殆ど無く。
時折見せる彼女の笑顔は何処か、とても儚く見えた。萩之介は令嬢、と言っていたが、どのパーティーでは彼女を見かけたことは無く。
更に龍ヶ崎なんて財閥も無かったはずだと思った。
何時もなら、気になる事はすぐに樺地やミカエルに調べさせるのだが、何故か彼女に興味が湧いて。
何処と無く彼女に惹かれていたのかもしれないが。調べてみるものの龍ヶ崎という苗字は該当せず。
そんな時だった。部活が終わり帰ろうとしていた時だ。
萩之介と龍ヶ崎の姿が校門にあった。何時もなら龍ヶ崎の車で萩之介と2人で帰るのを見ているのだが、今日は歩いて帰るらしい。
俺は迎えに来ていた運転手に彼奴らの後を追え、と伝えた。俺らしくもない行動だな、と少しため息を吐く。
暫くすると2人は、住宅地の密集する地域に入っていく。2人には気付かれないように。俺は後から連絡する、と運転手に伝え、歩いて2人を追った。
途中で萩之介と龍ヶ崎は別々の道を歩いて行く。いつもは髪を後ろに結っている彼女は、いつの間にか髪を下ろしていた。家が近いのか。と俺の鼓動も何故か早くなる。
そしてとある家─日本ながらの伝統的な建物の様式美である瓦屋根に木造の家。門は重厚感のある木造のもの。
彼女は門に手をかけ、ふと周りをキョロキョロしだす。そしてその中に入っていった。
「ここは……」
紫咲組、と達筆で書かれた木板が目に入る。そうか、彼女は─と理解した俺の後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「景吾くん」
「…萩之介」
そこには少し眉間にシワを寄せた萩之介がいた。