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Amor vincit omnia__愛の勝利

第46章 宿命(XANXUS)





今日も今日とて開かれるレセプション。所謂立食形式のパーティ。


俺はボンゴレ傘下のグループの息子として生まれ、金にも女にも何不自由なく育ってきた。ただ、ひとつ。”愛”なんてものは、俺には分からない。幾ら女を抱けども”愛”という感情は俺には芽生えることはなかった。

___10代の頃に参加したボンゴレ総本部で行われたパーティを、ふと思い出すことがある。あの時に見た、ひとりの少女。強面のマフィアたちの中にいた、あの少女。顔立ちを見る限り、恐らく日本人であろう少女の瞳にあの頃の俺は吸い込まれた。
それを今も覚えているなんて、これは、何なのだろうか。余程あの少女が、未だに気になっているのだろう俺に”愛”が芽生えているなんて自覚はなかった。



今日はあの少女を見たあの頃と同じ、ボンゴレ総本部でのレセプションで、そんな事を思い出しながらも擦り寄ってくる女共を適当に相手していた。
そんな時、急にざわつき出した会場。視線の先には、滅多に見ない顔があった。


『あれがⅨ代目の…』

『珍しいこんな所で見るなんて…』


と、口々に言う周りのヤツらに、あれが___ボンゴレⅨ代目直属独立暗殺部隊、ヴァリアーのボスであるXANXUSだと分かる。

ピリピリと痛いくらいに感じる、彼の雰囲気に俺は唾をゴクリと飲み込んだ。初めて見るあの男。なんて殺気だと。



まだ会場の入口にいた男は振り返り、手を差し伸べていた。男が手を差し伸べた先にいたのは、ひとりの女。女といってもまだどこか、あどけなさ残る少女だ。その姿に、先程ざわついていた会場は、さらに騒然としていた。


『あのXANXUSが女を連れてるぞ…』


なんて皆驚きを隠せない様子で。
男にエスコートされ会場入りした少女は、深紅と暗黒色が入り交じるドレスを身に纏っていた。




ドクン、と鼓動が波打つ。これは____
人目見て、俺は思い知った。あの頃見た、少女だと。



だが、そばにはあの男、XANXUSがいる。あんな殺気を振りまく男に、そう易々と近づける訳もなく。別にビビっているだとか、そんな簡単なものではない。どうしようもなく感じる畏怖の念に、俺は少女をただ、遠目に見ているしかできなかった。



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