第38章 ほしいもの(ゾロ)
目の前にいる、茶髪の女。この島内で、ひときわ綺麗な容姿をしている女が。
「俺はゾロだ。」
そう言えば、合わされた目。その目に惹き付けられたように、俺は女に近づいていた。
「な、なにを」
「あー…とりあえずこの部屋から出るぞ」
「え。で、でもここから私は____」
出れない。なんて彼女は言う。
影がないからか、と思えば影はしっかりあるし。かといって、手錠で繋がれているわけでもない。
「…なぜそんなにこの部屋に固執する?」
「…固執、ね。違うよ。」
「…じゃあ、なんで。」
「わたし、この部屋から出たことないの」
なんて言う彼女。このくそ広い島のたったひとつの部屋から、出たことがないなんて。
「はっ…」
「え?」
「…部屋を出たことがないから、出れない、ねぇ」
「…え。…ちょっと…!!!」
「俺はお前と出たいんだが?」
「!??」
彼に横抱きされて、はじめて出る部屋の外。あんなに小さな世界にいたのか、わたしはなんて思って。
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「ん……ゾロ?」
「おう。起きたか」
わたしは夢を見ていたんだ、彼と出会った時の夢を。
「?なんだ、人の顔じっと見て」
「…んーん、なんでもない」
あの日、彼から連れ出されて。世界がどれだけ広かったのか、身をもって知った。ちょっと順番は違ったけれど、今こうしてわたしは彼の隣にいる。
「…何笑ってやがる」
「なんでもないってば」
「ほぉ。俺にも言えねぇってか。なら…」
「ちょ…!さっきシたばっかり…!」
「あぁ?ンなもん関係ねぇよ。欲しいモン、目の前にして手を出さねぇなんて男が廃るだろ?だって俺は______」
ほしいもの
___ぜんぶ奪うだけだ
(だって海賊だぜ?なんて目の前で笑う彼を見て)
(連れ出してくれた彼の笑顔が眩しかったことを思い出した)
end
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途中でこころおれかけた、なぜ。笑