第38章 ほしいもの(ゾロ)
気づいた頃にはこの”場所”にいた。この場所___スリラーバークに。
王下七武海ゲッコー・モリアの所有する世界最大の海賊船。元は西の海にあった島だが、モリアの改造によりひょうたん島のように巨大な浮き島になっている。通りかかる海賊等を襲いモリアの能力によって影を奪っていた。元々西の海の島なので記録指針が反応しない”ゴースト島”。
モリアが毎日創り出す”兵士”たち。兵士、いわゆるゾンビ。
そんなゾンビに周りを囲まれる毎日で。
”わたしはいきているのか”なんて分からない。
陽の当たることのないこの島では、生きてる心地なんてしなかったから。
でも私は何故か優遇されていて。まるで扱いはお姫様。
ペローナ曰く、どこかの国からモリアに攫われたらしいけど。国にいた記憶なんかわたしにはない。物心が着いたときには、この島にいたから。
「…相変わらず気味悪い島、ね」
これも口癖になっていた。毎日毎日、昼なのか夜なのか分からないこの島で。
そんな中また、誰かがこの島に乗り込んできたらしい。それで外が騒がしいのね、なんて。またモリアにやられるだけなのにね、と思いながら月を眺めていた。
『ライカ様っ…!!!』
モリアに与えられた広すぎるわたしの部屋に、兵士たちがやってきた。
「…どうしたの?」
『ここは危険です!はやく他の部屋に…ぎゃぁぁぁ!』
目の前で干からびていく兵士、もといゾンビたち。何が起こっているのか、皆目見当もつかなかった。
「なんだ、この部屋」
「…誰、ですか」
「…あ?まだ人が居たのか」
目の前の緑頭の男は、腰に携えた刀に手をやった。
「ちょ、ちょっと待って…!わたしは攻撃するつもりはない!」
「あ…?なんだ、女…?」
こちらに敵意はないと感じたのか、男は手にした刀を鞘に収める。
「…お前、誰だ」
「…普通自分から名乗るんじゃないの?」
「あー…」
それもそうか、俺はゾロだ。そう語る彼と、目が合った。
その瞬間に、なにものかわからない衝撃が、わたしの中を駆け巡っていた。