第33章 帰る場所(XANXUS)
XANXUSと心を通わせたあの日から数日。
頼華が毎夜歌うことはなくなって。歌うことはあれど、悲しみに満ちたあの声ではなくなった。
もちろん魘されていたあの悪夢からも、解放されて。
『やだ、やめてー!!!!!』
目の前で凍らされる愛しい人。あの時わたしは何も出来なくて。
ただ、見ているしか出来なかった。
傷ついていくXANXUSを、見てることしか。
闘いがおわって決められた未来になり、XANXUSはその為だけに傷ついて。正直、チェルベッロが彼に触れた時、虫唾が走った。
でも、今は違う。いちばん遠かったはずの、彼がいちばん近くにいる。それだけで、今の私には充分で。
私の膝の上で眠る彼の頭に触れる。これが、現実なのだ、と。
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頼華と心が通じあったあの日から、何もかも変わった、はずだった。未だに俺から離れない、悪夢だけは変わらずに。
”あの日”。
幻の風の守護者だからと、チェルベッロのヤツらにつけられた半面を被らされ、傍観していた頼華。
半面を被っていても、分かったあいつの悲しみに満ちた顔。
そして、奴に凍らされたとき、氷のなかからでも聞こえた、あいつの悲痛な叫び声。
あんな、顔、もう見たくないのに。
そんな悪夢が、まだ、俺を。
「…す、」
「っ……」
「___XANXUS!」
聞き覚えのある声に目を覚ます。そこには儚げな顔で俺を見る、頼華だった。
「…お、れは」
「魘されてた。また、”あの夢”見たの…?」
悲しげな瞳は俺を見てそう問うた。
”あの夢”____きっと、こいつは俺がなにを見ていたか、知っている。
何も言えなかった。
「…は?」
今、何が起こっているのか。
頼華が、俺を、抱きしめながら泣いている…?
「…ごめんね、」
「…謝るな」
「違う、違うよ」
XANXUSのせいじゃない、なんてそう言いながら。
「もう、大丈夫だよ」
「……」
「…もう、ひとりじゃないよ」
「…!!」
…そうか。その言葉が、欲しかったのか、俺は。