第13章 Beginning of Hell
「な、んで?」
「んなの私にだってわかりませんよ」
「目、覚めたんじゃないの?」
「とにかく早く出ろ」
その場で電話に耳を当てれば
聞こえてくる声は、愛しい人の
お母さんの声・・・・・・。
「あの、和也です」
『あ、の母です』
「はい。何か、あったんですか?さんは」
『目は、覚ましてないんだけど』
「けど、なんです?」
『寝言らしきもので、魘されてて』
「寝言?」
少し、間ができた。
でも、さんが声を出してるなら
ひとまず一大事の知らせではないようで
ほっと安心。
それから、お母さんの声を待って
聞こえてきたのは。
『和さん、和さん、って、言い続けてるんです』
そして、耳に届く、別の声。
さんの、寝言。
『か、ず、さん・・・』
携帯を握りしめたまま、体が勝手に動いた。
地面を踏んづけて立ち上がり
車を降りて、ただ走り出した。