第13章 Beginning of Hell
立ち上がって言えば
お母さんは目を見開いた。
「この子がどんな子でも、幸せにしてもらえるのかしら」
「します。俺も、さんに幸せ貰ったんですよ。小さいことだけど、この人本当にすごいなって・・・。きっと沢山抱えてるんだと思います」
そこまで話すと、お母さんは
背筋を伸ばして目に涙を溜めていた。
この人も、沢山抱えてるんですよね。
「俺に、さんの抱えてるもの消していく権利をください」
眠るさんを挟んで
お母さんに頭を下げた。
「娘を、よろしくね。和也くん」
息の抜けた声を出すお母さんに
自分は声にならない返事をした。
どんな障害を持っていても
どんな病気を持っていても
どんな過去を抱えていても
二宮和也は、さんのことが
好きなんですよ。
だから、誰に許しを得ましょうか
さんの側にいさせてください。
鼻をすすりながら部屋を出ていったお母さん。
腰かけてから、さんの
白くて指の長い手を握った。
さんの容態の急変は
脳にできていた腫瘍の
急速な成長によるものでした。