第12章 好き
「明後日・・・どこ行きます?」
「あ、そうだ。看護師さんがね。公園の近くに喫茶店ができるんだって言ってた」
「喫茶店?」
「うん」
二人ともあやふやだったけど
喫茶店でティータイムをしてから
公園で夕日を見ることにした。
憧れてた。
こんな素敵な約束を。
ずっとずっと、夢見てたから。
にっ、と歯を見せて笑えば
和さんはクスクスと笑ってくれる。
その人の右手には、もう何もついていない。
「手、治ったの?」
「あぁ。まあなんとかね」
「よかったですね」
「はい」
治るんだ。
私と違って、治るんだ。
もう、会えない?
今なら聞ける。
もう怖くない。
堂々と聞けるんだよ。