第9章 また逢いたい
「和さん」
「ん?」
「お仕事頑張ってね」
「はいはい。ご心配なく」
なにか言っても
ただ答えて、そっけない。
これがこの人なんだな。
和さんなんだ。
「和さん」
「はあい」
「なんでもない」
「は?」
もっと話していたいけど
エレベーターや時は
私がどれだけ願っても止まらない。
こんな日に限って
誰もエレベーターを止めない。
「和さ「さん」
呼ぶ声が、和さんに遮られた。
怒らせたと思った。
だから返事しなかった。
「さん?」
もう会えないって言われる。
振られる間近の彼女の気分を味わった。