第9章 また逢いたい
エレベーターが、音を出す。
降りてから、また
昨日雑談した場所へ。
細い廊下の片隅で
車イスは回転した。
和さんと面と向かって
というか、完全に見下ろされてるけど。
「さーん」
しゃがんで私の顔を覗いてくれるけど
あえて目を合わせなかった。
無視して帰っちゃえばいいのに。
アイドルだもんね。
仕方ない。
でも私は、一度幸せを味わうと
欲が出てしまうから。
「帰れば」
思ってもないことを
ポツリと呟いてしまう。
「は?」
「帰ればいいよ。もう会えないなら、会いたいって思わせないでよ。帰れば?」
これだから
言い出すと止まらない。
ホントバカ
。