第7章 見えない恋心
「なんか、待ってて思ったの。夕日を見に来たわりには、すぐ飽きましてね。ただ貴女を待ってた・・・って感じ?」
下手な話だけど
あながち嘘じゃない。
「あ、からす?」
「え?」
夕日の真ん前を通る黒い影。
2羽のカラス。
「見えない」
「小さいもんね」
「ふん」
さんの高さじゃ
丁度フェンスの影で見えてない。
必至に見ようとする動きが
なんか怪しくて
「ふふっ」
「なによー」
「どこまでも変ですね、貴女」
「見えないんだよおー」
左右にぐらぐら動くさん。
カラスはどんどん列を作ってやってくる。
私に時間をくれるかのように。
さんの横にかがんで
膝の後ろに手を入れた。
「ひゃっ!なに?」
驚くこの人はほっといて
腕を自分の首に回らせる。
それから私が立てば
さんは忽ち車イスから浮いて
ふんわり私の腕の中。