• テキストサイズ

空と陸の距離

第14章 誰にでも


「さん?」
「?どうしたのよ。和也くん、逢いたかったでしょ?」


お母さんの言葉なんて、耳に入らないという顔をしている。

自分の組んだ手を見つめながら
さんは言った。
悲しい、私の苦手な顔をしながら。



「和さん。本当に短い間だったけど
本当に楽しかったよ。私はもう十分。
だから、ね。もうこんなところに来なくても
いいんだよ。
好きって言ってくれて、キスもして
幸せ過ぎたんだよ、私には。
味わっちゃいけなかった。
私、欲張りだから」


そこまで話して、えへへ、と笑った。


「もう、思い残すことなんてないよ」






あーあ。無理しちゃってる。


「そんなの・・・まるで・・・
え、腫瘍だって小さいんでしょ?
大したことないんですよね、病気なんて」


そういうと、お母さんは泣き出して
さんは首を、横に振る。

振ってほしくない方向に。


それからまた、今にも泣きそうな顔で
口許を歪ませながら言った。



「腫瘍が急速に成長しちゃったんだ」
「え・・・」
「私、あと・・・「やめなさい!」
「あと!!」



お母さんの遮りをさんは叫んで遮る。

ついに、涙が零れた。




「和さん、私ね。





























あと一年も・・・生きられない」























目の前が、真っ暗になる。


お母さんが駆けて出ていく音がした。


視界はぼやけて・・・・・・泣いてる。









私もさんも。
でも、さんは・・・外を向いて。





/ 124ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp