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かわいいひと

第16章 露草の消ぬべき恋も【宇随天元】



【その後の宇随家】


「ポコポコしてる!」

露花がまきをのお腹に手を当てると中にいる胎児が動いた

「天も触りなよ 弟か妹が喜ぶよ」

峰緒の子供の天元は夫と同じ名前だから呼ぶ方も呼ばれる方もややこしいと 小さい天元は「天」と呼ばれている

その天がお腹に触れたらまたポコッと動いた

「すごい!まきを母ちゃんの赤ちゃん俺達が兄姉だと分かってるみたいだね」


天元と露花は宇随が父親だと紹介された時は喜びはしゃいでいたが

一緒に来た3人の綺麗な女の人が宇随の嫁だと聞かされ あげくに母親である峰緒も入れると嫁が4人に…つまりはお母さんが4人になる事に困惑していた

だが言葉通りの宇随の溢れんばかりの愛情と嫁達のおおらかさと明るさで今では雛鶴母ちゃん まきを母ちゃん 須磨母ちゃんと呼んで懐いている


3人の中ではまきをが最初に妊娠してもうすぐ出産予定で

半年遅れで雛鶴が妊娠したが彼女は悪阻が酷くて6ヶ月過ぎた今も寝込んでいる



大黒柱の宇随は峰緒の父親と共に産屋敷の商売の一部である運送業を任されて忙しく働いていた


宇随の家族になると決めた日 いきなり長女役を任されて困惑していた峰緒だったが
嫁達のおおらかさに助けられて峰緒は宇随家に馴染んでいった
今では須磨と2人で宇随一家を切り盛りして2人の妊婦の世話に忙しい


悪阻がひどく食が進まない雛鶴の為に峰緒は林檎の甘煮を作ってみた
これは自身が悪阻の時期に甘酸っぱい物なら食べれたからと 試しに林檎で作ったら雛鶴が「美味しい…」と言って久しぶりに気分を悪くする事なく食べる事ができた


それを聞いた宇随が毎日色んな果物を買ってくるから 甘煮にした果物が瓶詰めにされて台所に沢山並んでいる


今日も台所からは甘煮をコトコトと煮る甘い匂いがしていた


「う~ん…いい匂いですねぇ峰緒さん」

薄い桜色の甘煮を時々しゃもじで混ぜながら煮詰まるようすを須磨は見ている


「今日は さくらんぼ なの初めて作ったから冷えたら2人でこっそり味見をしましょう」

「賛成です!」

そんな事をこそこそと話ながら顔を寄せて笑いあう2人を宇随は目を細めて見ていた


「こんな幸せで俺はいいのかねぇ…」


忍として生きていた頃に沢山の命を奪った罪と兄弟を手にかけた罪 鬼殺隊として助けた命…天秤にかけてもまだたりねぇ…よな

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