第16章 露草の消ぬべき恋も【宇随天元】
岩の隙間から流れる湧水で手拭いを濡らして峰緖の体を拭いてやると 水の冷たさで目を覚ました
群青の瞳が宇随を見つめるとふわりと笑い宇随の胸に顔を寄せて心臓の上あたりを強く吸い付き赤い痣を作った
宇随が嫁と暮らしだしてからは峰緖は宇随の体に痣を付ける事はしなくなった
その事を少し寂しく思っていた宇随はちょっとだけ喜んだ
「本当にどうした…今日は甘えん坊だな…まだ足りないのか?」
くノ一として優秀な峰緖は普段から感情を抑える事が当たり前になっていて 今日みたいにむき出しの思いをぶつける事は宇随にでさえ少ない
「私の心臓も天元のものだよ…それを刻みたかった…心と体に忘れないように…」
そう言って涙を流す峰緖を見て宇随は峰緖が誰かの嫁候補になっている事をさとった
「誰だ?」
「天元の弟…だから…さすがにもう…出来ない」
「そうだな…俺も弟の嫁は地味に抱けねぇ…峰緖は今日が最後のつもりで俺に抱かれたんだな…ならもう少し頑張れ 俺は最後だと思って抱いてねぇから」
「えっ!無理!…っ…天元…もう体がもたない」
「大丈夫だよ ゆっくり抱くから…地味に丁寧に時間をかけて峰緖の匂いも声も音も…今からじっくり俺に刻む…」
兵糧丸を宇随から食べさせられて少し休んだ後は宇随の気がすむまで峰緖は抱かれた
優しく丁寧な愛撫は峰緖の体をトロトロに蕩けさせ腰が立たなくなり 夜もかなり更けてから人目を忍んで宇随に背負われて里へ帰った
それからすぐに峰緖は宇随の弟へと嫁ぎ
後継ぎを産むために任務を与えられず他の2人の嫁と暮らしていた
宇随の嫁 雛鶴は峰緖と夫の関係は知っていて 感情を顔に出さない峰緖が結婚してからずっと寂しそうな顔をしている事を心配していた
そんな1年もたたないある日 弟が長期の任務で家を留守にしている間に峰緖は嫁を2人殺害して里を抜けた
すぐに当主は追手を出したが
峰緖は皆が思っていたよりも優秀なくノ一だったようで5人の追手は1人も戻ってこなかった
それなりの手練れが戻ってこない事に当主はただでさえ少ない忍を無駄にする事を嫌がり追手をかけるのをやめた
宇随は自分には何か残してないかと秘密の場所の崖に行ったが露草の一部を掘った跡があっただけ何も無かった