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かわいいひと

第15章 骨まで愛して 【妓夫太郎】




美津が目を覚ますと陽光の光で部屋は明るくなっていた


ぼんやりとした頭で体を動かすと下腹部の鈍い痛みと体の痛みで昨夜の情事を思い出した美津は薄い桃色の襦袢を着ている


「太郎さん…?」


痛む体を起こし立ち上がると情事の名残が美津の太腿に垂れる 慌てて厠へと駆け込み小水をすませる
昨夜はあまりの気持ちよさに漏らしてしまった事を思い出し恥ずかしい


2階は日当たりがよく明るいのだが長屋の1階は日もあまり入らず薄暗く ひんやりとした部屋は美津以外誰も居なくて 美津は情事の最中に漏らしてしまったせいで妓夫太郎は呆れて出ていったのだと思い肩を落とす

喉の渇きもあり台所へ行くと 妓夫太郎が持っていた風呂敷に包まれた蕨姫花魁からの御礼の品が置いてあり その横にミミズの這ったような字で

「今度 風呂敷を取りにくる」と書いてあった


「また…来てくれる…っ…」
つぶやき 美津は喜び涙を流した



汗と体液で汚れたはずの美津の体は妓夫太郎が拭いてくれたようで思ったよりもべたべたとはしてなかった それでも髪は汗と激しく乱れた為にぐちゃぐちゃだったのもあり我慢が出来ずに美津は木札を持ち湯屋へ行く


吉原は何度か大火に見舞われ 住人は火の始末にはかなり気を使う なので個人宅に風呂があるのは珍しく 美津の長屋にも風呂場は無かった

夜遅くまで働く吉原の住人達は仕事終わりに湯を使う事は少なく
昼見世の時間前は風呂場の無い店の花魁達が通い その時間を避けて他の住人が湯屋へと行くのが定番だった

いつもの美津ならその前に湯屋へと行くのだが今日は起きたのが遅かった為に申し訳なさを感じながらも準備をして湯屋へ向かった



湯屋に毎日通う度にお金を払うのを省略する為に木札を毎月買い番台に見せ女湯に入る


何人か美津の顧客が居た

「あら お美津ちゃん今日は遅いのね」


「ちょっと寝坊してしまって…千ぐさ花魁ごめんなさいね」

「いいのよ いつもお美津ちゃんにはお世話になってんだから…っ…てヤダ!」


美津が着物を脱ぎ素肌をさらすと それを見た千ぐさ花魁が美津の肩を叩く


「昨日は随分激しくされたね…あんたも吉原の女だねぇ…」

周りの花魁達もキャッキャと騒ぎだしてから やっと美津は体中に散りばめられた赤い痣に気付いて体中をほんのり桃色に染めた









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