第14章 共感覚 【宇随 天元】
日本に戻れることになった時は出国してから3年が過ぎていた
生きて帰国した事は私が一般人だった事もあり公表はされなかった
2年も匿ってくれたカミルも一緒に日本に行こうと言ったけど カミルは「この国で教師になる夢がある」と言って断られた
紙幣は価値が変動するからと政府から極秘に宝石と金がカミルに渡されてカミルは国が落ち着いたら大学へ通い教師になるといって私と別れた
日本に帰ると私はPTSDに悩まされた
2年以上も気を張り積めて生きていた私は 車の音がすれば部隊の外国人狩りが来たのかと怯え 人の話し声がすれば密告されているのではと怯える 発作的に震えて過呼吸になっては倒れていた
両親から天元の話も聞いた
彼は3年も気にしていたと…でも両親が「私を思い出にして新しい人生を…」と話した事も聞いた
私もそれでいいと思った今の私は外に1人で出る事すら出来なかったから…
それは偶然だった…と思う
帰国して4年が過ぎて私は薬を飲んではいたけど外に出て働けるまでに回復していた 医療事務の資格を取り実家から電車で30分の総合病院で働いていた
朝 待合室にある新聞を交換していると新聞立ての下にいつの日のかわからない くしゃくしゃになっていた新聞があった
新聞のしわを伸ばしていると 一部だけ優しい色がチラチラとする
私の共感覚は人や声に見える文字に見える事は無いのだけど不思議に思い記事を見た
「現役美術教師 二科展入選 宇随天元氏
作品名 実知 」
この作品も含めた入選作品は○○百貨店にて10月20日まで展示 その後は○○美術館で展示されます
小さな記事に小さな写真だから顔も作品もよく見えない…
でも作品名…もしかすると天元は私を描いてくれたのかもしれない
今日が最終日だ…次の美術館は遠いし 今日は早出で15時には仕事が終わるそれから特急に乗って見に行く事に決めた