第13章 思い出紡ぎ 【悲鳴嶼 行冥】
私は選別での7日目の夜明け前
鬼の首落とす直前に体を強く叩きつけられた
その後遺症で左手が時々震えてしまうようになり 鬼殺隊士として鬼狩りを出来なくなり今は隠として活動している
その選別での生き残りは私と行冥くんだけだったから 私が隠になっても彼は何かと気にかけてくれた
大怪我をした と 絶佳(ぜっか)から聞いて自宅療養していた行冥くんの世話に行った
他の隊士を庇い背中や腕に怪我をして体のほとんどに包帯が巻かれている そんな姿なのに「お腹が空いたから」と台所で料理をしていた
「本当に見えてないの?」
行冥くんの隣に立つと私は彼の肘の所にしか届かない 彼の顔は遠かった
「感がいいからかな…なんとなく分かるんだ…でも…」
彼は屈んで大きな両手が私の顔に触れる
「空間認識はできても 君の顔が見れないのは残念だ…だがこうして触れるとなんとなく分かる…君は少し垂れ目なんだな」
彼の手の温もりも私の顔をペタペタと触る感触もふわりと笑い目を潤ませ近づいた顔も嫌では無かった
「…弥雲(みくも)…」
「なに?」
「俺は弥雲をもっと知りたい…だからもう少しだけこのまま触れていたい」
顔がもっと近くにきて言葉が鼓膜を揺らす…行冥くんに気持ちを初めて伝えられた日だった