第9章 恋に落ちる 2 【不死川玄弥】
【悲鳴嶼と玄弥】
昼を過ぎた頃に玄弥の気配を感じた…
昨日は知り合いに合うと言っていたが泊まりだったのか…と思う
私の所に来てから初めての外泊…そんな友が玄弥に出来た事を私は純粋に喜んでいた
私はいつものように滝に打たれてから岩を移動させる鍛練をしていた
「悲鳴嶼さんすいません…俺も準備してからやります!」
そう声を掛けてから私の横を走り去る
風がふわりと揺れた時…玄弥の匂いに混じった別の匂いを感じる
討伐の時に昂る気持ちを沈める為に遊廓の女を抱いた事は何度かある…睦あった後の男女の精が交じりあったあの匂いが玄弥から初めてした…
それにもう1つの匂いは私は…知っている
瑞穂…か…
滝に入ろうとした玄弥に、鍛練に参加していた隊員達から盛大にからかわれている声が聞こえてくる
「バカ!刺激強すぎんだよ!」
「今日は岩を倍動かせ!」
「吸われた痕が背中と首と肩に付いてんだよ!」
「どこの遊廓に行ったんだ?…まさか…その反応は居るのか!恋人が!」
玄弥と瑞穂か…南無…南無…南無…
その日料理担当の隠は悲鳴嶼から珍しく指示があった
悲鳴嶼は任務があり玄弥とは夕食を共に出来ずに出発した
いつも一緒に料理をする隠が、今日はもうすぐ出来るから先に風呂に入れと、玄弥を台所から追い出した
風呂から上がり夕食の膳をいつもの隠が持ってくる
悲鳴嶼さんがいない時は一緒に食べるのに今日は1人分しか持ってこない事を不思議に思いながらも膳へと視線を落とす…
膳に並んだ赤飯と鯛の塩焼きを見た時の玄弥の顔がなんとも面白くて隠は思わず吹き出した
「玄弥の祝いだとよ…それに柏木さん(瑞穂の名字)にも届けろと悲鳴嶼様に言われたけどさぁ 女心を考えるとな…俺が持っていっていいもんかな?」
「…やめてくれ」
「俺が一緒だと食べずらいだろ 今日は帰るな!…それと俺は口堅いから!」
それに空気をも読める隠はいそいそと帰って行った
ー終ー