第7章 匂いに酔う【竈門 炭治郎】
面白半分で覗きにきた善逸に、着崩れた美桜の豊満な胸元に顔を埋めて眠っている姿を見られ
慌てた炭治郎は美桜から離れ露になっていた美桜の袷を直した
昨晩は不安で眠れていなかった美桜が、突然離れた炭治郎を抱き寄せ寝ぼけたまま
「炭治郎くんの匂いが好き…」
と言って炭治郎の耳に鼻を寄せて匂いを嗅いだりしたから
善逸の甲高い絶叫が蝶屋敷中に轟き、しのぶから物凄い無言の怒りの匂いと音に二人は震え上がり自分のベッドに戻った
そんなしのぶの怒りや善逸の金切声にも美桜は起きる事もなく眠る姿に、伊之助は「アイツ只者じゃねぇな…」と感心していた
昼過ぎに起きた美桜は、しのぶの所に行き朝の非礼を詫びた
「いいんですよ怪我人もいませんし…それほど美桜さんは竈門くんの事が大切なのですね」
「でも…次は無いです」
いつもの微笑みを浮かべているはずの、しのぶの顔が今日は怖かった…
「炭治郎くんの無事も確認できましたから今日はもう帰ります。また改めてお見舞いに来ます」
「竈門くんは今日退院です」
「えっ?」
「鬼の毒の影響も無いみたいですし、後は山にでも行って薬草の手入れを行えば沢山日光を浴びれられますし、いい治療になると思いますので一緒に連れて行って下さい」
白雪の繋がれた所に行くと、いつもの隊服と市松模様の羽織を着た炭治郎が振り向いて「美桜さん」と言って手を振った
馬に乗りなれていない炭治郎を前に乗せて、美桜は後ろから支えるように手綱を握ってゆっくりと白雪を進めた
「炭治郎くん禰豆子ちゃんは?」
いつもの木箱が炭治郎の側に無いことに気付く
「善逸が…連れて行かせないって言って離してくれなかったんだ」
「やだー炭治郎も禰豆子ちゃんも居なくなるの寂しいぃぃ 俺も一緒に連れて行くか禰豆子ちゃん置いて行ってぇぇ」
しのぶから山へ療養しに行く事を進められている炭治郎の隣で、大泣きされ駄々をこねる善逸に困っていた炭治郎は部屋の角に置いていた木箱が開くのに気付いた
禰豆子はそっと顔を出して炭治郎に手を振った
「禰豆子…善逸と蝶屋敷に残るのか?」
禰豆子はニッコリと笑い、うんうんと頷き手を振って再び木箱を閉じた